破局を乗り越えて運命を共にすることで生み出された、不朽の名作。
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世界中で大ヒットを記録し、今なお多くの人々に愛され続けるアルバム。その背景には、複雑なバンド内ドラマがあった。もともとはブリティッシュ・ブルースバンドとしてスタートしたものの、主要メンバーの交代が相次ぎ、残された3人であるミック・フリートウッド(Dr)、ジョン・マクヴィー(B)、その妻でもあるクリスティン・マクヴィー(Key/Vo)は、グループ復活のために渡米。ロサンゼルスで出会ったリンジー・バッキンガム(G/Vo)とスティーヴィー・ニックス(Vo)を加入させ、再出発を果たす。新たなラインナップで完成させたアルバム『Fleetwood Mac』は、見事に全米1位を獲得した。しかし、それに続くアルバムの制作段階では、ジョンとクリスティン、リンジーとスティーヴィーの両カップルとも関係性は終焉を迎え(ミックも同時期に離婚)、プライベートでの人間関係は破綻してしまう。そんな状況下で、メンバーたちは個人的な感情を乗り越え、本作を完成させた。そして『Rumours』は、発売後1か月で1,000万枚以上を売り上げる成功作となる。
この時期のフリートウッド・マックは、イーグルスやリンダ・ロンシュタットなどのウエストコースト・サウンドと、ボストンやフォリナーといったロックバンドの中間に位置する存在と言えるだろう。シンガーソングライターのソフトな音楽性を組み合わせた耳なじみのいいロックミュージックが大きな支持を得て、巨大なセールスを記録した時代だった。そうした流れの中でも『Rumours』は、リアルな人間関係からにじみ出た、ヴィヴィッドな感情の機微を内包しているところが、大勢のリスナーの心をつかんだのだろう。