親密かつ普遍的な、愛と喪失についての探究。
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ジョニ・ミッチェルの最高傑作と評価する声も高い、4作目のアルバム。ジョニは音楽活動の初期段階を過ごしたカナダのサスカチュワン州やトロントのフォークシーンを離れ、1960年代の後半にはロサンゼルスのローレルキャニオンへと移り住んでいた。当時、多くのミュージシャンが集まり、カウンターカルチャーの聖地となっていたローレルキャニオンで、新しい時代の空気を背景に、『Blue』の収録曲は書き上げられている。この頃、彼女の才能を見いだしたデヴィッド・クロスビー(ジョニのデビューアルバム『Joni Mitchell (Song to a Seagull)』をプロデュース)や、本作にベースとギターで参加しているスティーヴン・スティルス、ジョニの恋人でもあったグラハム・ナッシュ(「My Old Man」や「A Case of You」はナッシュのことを歌っていると言われる)というCSNの3人をはじめ、レナード・コーエンやジェームス・テイラーなどそうそうたるシンガーソングライターたちにとって、すでにジョニ・ミッチェルはミューズのような存在となっていた。
『Blue』には、ナッシュとの破局/テイラーとの新たな恋の始まりという心の動きが反映されており、また後年になって明らかにされた事実だが、「Little Green」は彼女が養子に出した娘へささげられた曲である。ジョニ自身が経験した愛と喪失の感情を、きめ細やかに掘り下げながら、それらをシンプルに研ぎ澄ませた楽曲と美しい歌に昇華させた本作は、ジョニ・ミッチェルの持つ類いまれな才能を証明する不滅のマスターピースだ。