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The Dark Side of the Moon

ピンク・フロイド

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ロックとエレクトロサウンドの完璧な融合を世界に示した、サイケデリックミュージックの最高峰。

『The Dark Side of the Moon』は、同時期にリリースされた他の有名なロックアルバムと比べても、ザ・ローリング・ストーンズのような享楽的な解放感とは相反するように、より人間の精神的な部分を深く掘り下げ始めていた。また本作は、実験的な音作りをさらに極める一方で、そこに明快さを持たせることにも成功しており、こうした進歩の在り方は、ピンク・フロイドに大きな商業的成功をもたらすことになる。「Money」では“強欲”、「Brain Damage」「Eclipse」の“狂気”、そして「Us and Them」における“戦争や社会の分断”といった大きなテーマは、音楽がどれほど先鋭性を発揮していても、分かりやすく簡潔なメッセージの下に探求されていた。

ロック史上で最も著名なアルバムの一つであるにもかかわらず、本作はロック色がそれほど強くない。例えば、SNSで再流行したナンバー「The Great Gig in the Sky」での恍惚(こうこつ)とした叫びのように、バンドが力強い演奏をさく裂させているような時でさえも、テクスチャーと感覚がいっそう際立っている。このアルバムは、『OK Computer』時代のレディオヘッド、あるいはTame Impalaのような、アーティスティックでポストサイケデリックなスタイルを持つ作品の先駆けになったとも言えるだろう。同時に、ロックミュージックがエレクトロサウンドと完全に融合した瞬間の記録でもある。この見事なハイブリッドの完成度は、『The Dark Side of the Moon』が発表されてから50年以上を経た今もなお、十分な鮮やかさを保ち続けている。

「これを聴くたびに、どこかに運ばれているような気分になる…それはまさに、無重力の状態で宇宙船の窓から外を眺めているような感覚だ」

クリス・ハドフィールド

宇宙飛行士