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Supa Dupa Fly

ミッシー・エリオット

75

アバンギャルドなラップヒーローと革命的なプロデューサーが組んで作り上げた、ラディカルで衝撃的なデビュー作。

バージニア出身で、非行や軽犯罪などを意味する“ミスディミーナー”の愛称でも知られるラッパーのミッシー・エリオットとプロデューサーのティンバランドの2人は1997年の時点ですでに、時代を代表する先鋭的なヒットメイカーだった。ソングライターとしてアリーヤやSWVといったアーティストのためにジャンル分け不能でアバンギャルドなR&Bを手掛けていたことがすでに広く知られていたからだ。ただ、ミッシー・エリオット自身がゴミ袋を膨らませたような奇抜なファッションで、機能不全のロボット工場を歩き回りながらラップと歌を自在に操るスタイルを披露したことには世界中が驚愕(きょうがく)した。

オフビートなせき払いやメロディアスなフロウから空白や擬音まで自在に操るスタイルで、ミッシー・エリオットを瞬く間にスターダムへと押し上げたデビューシングル「The Rain (Supa Dupa Fly)」はポップな快楽への入り口として機能したといえる。そして、アルバム『Supa Dupa Fly』には、ファニーでありながら大胆な性的表現にも積極的で、情熱的な歌唱とアニメのようなSEと笑い声の間を行き来するようなラディカルな表現が詰め込まれた。彼女はこのアルバムで、まったく新しいタイプのアバンギャルドなヒップホップスターのイメージを世に知らしめたのだ。

「リスクを取ることへの恐れはまったくなかった。特定のスタイルだけが聴きたかったわけじゃなくて、自分たちが作ってるものを聴きたかったし、それで正しいと思ってた」

ミッシー・エリオット

ティンバランドの担当はヒップホップのプロダクションを新たに定義することだった。予測不能な位置で鳴るハイハットとスネアに鳥のさえずりや含み笑いまで交えたような斬新なトラックは、アーティスティックなセンスとバブルガムとも取れるポップさを併せ持つミッシー・エリオットの傑出した才能を余すところなく引き出すことに成功。その結果として『Supa Dupa Fly』はヒップホップやR&Bのみならずエレクトロニックミュージックにまでも大きな影響を与えている。