絶頂期にあったエルトン・ジョンが、その強い個性を奔放に表現した折衷主義の極み。
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キャリア初期の3年という短い間に、セカンドアルバム『Elton John』の「Your Song」や、『Madman Across The Water』に収録されている「Levon」といった曲での流麗なオーケストレーション、そして『Honky Château』の「Honky Cat」や、『Don’t Shoot Me I’m Only The Piano Player』収録の「クロコダイル・ロック」ではバーの喧騒を重ねてその音楽性を飛躍的に広げたエルトン・ジョンが、自身の音楽的衝動をすべて結集すべき時が来たことを確信した一作。当時、LPにして2枚組のボリュームとなった『Goodbye Yellow Brick Road』は、ほとんど気まぐれのような折衷主義に驚かされながらも、エルトン・ジョンが選んだ道にはどんな道にも付いていくオーディエンスからの信頼を確固たるものとした。その結果、キャリアのピークに輝く本作は、商業的にも批評家筋からも賞賛され、まるでベストヒット集のように見えるトラックリストが印象的なアルバムとなった。
「Funeral for a Friend / Love Lies Bleeding」で幕が切って落とされる本作のオープニングは、エルトン・ジョンの初期のキャリアと、絢爛(けんらん)たる帝国時代のスケッチとも言えそうな仕立てで、その音楽的振れ幅の広さに、タッグを組む作詞家、バーニー・トーピンが手掛けたハリウッド映画的な歌詞を融合させている。ラジオフレンドリーな同曲の展開は、マリリン・モンローへのセンチメンタルなトリビュート「Candle In the Wind」へと続き、そのまま「Bennie and the Jets」で、エルトン・ジョンならではの完璧な華やかさを爆発させる。他にも哀愁を帯びたタイトルを持つ「Saturday Night’s Alright for Fighting」をはじめとして、本作からは多くの曲がスタンダードになったが、注目に値しない曲は1曲もなかったという方が正しいだろう。それは『Goodbye Yellow Brick Road』のために集められた価値ある素材の豊かさも同時に伝えている。