さあ、チケットを買ってアトラクションに乗り込もう。
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トラヴィス・スコットの故郷であるヒューストンにかつて実在した遊園地、Six Flags AstroWorldにちなんで命名された3作目のソロアルバム『ASTROWORLD』。本作では、言葉を失うほどの急上昇からの急降下など、まるで上質な遊園地のようなスリル満点のエンターテインメント体験が味わえる。この独創的なテーマパークを特別なものにしている最大の要因は、時代を代表するトップアーティストから才能あふれる新世代まで、さまざまなミュージシャン、ボーカリスト、プロデューサーたちをキュレーションしていることにある。その結果、ラッパー/プロデューサーとしてトラヴィスが思い描いたコンセプトが圧倒的なクオリティで表現され、『ASTROWORLD』における最も魅力的な“アトラクション”として彼自身の存在感を際立たせている。
アルバムの冒頭を飾る「STARGAZING」でトラヴィスは、「幻覚剤が俺をクレイジーにするんだ(Psychedelics got me going crazy)」と語り、後に続くアルバム全体でそれを証明する。例えば、リリース後に大きな話題となった「SICKO MODE」では、複数のビートチェンジに加えてドレイクがバースの途中で急停止するなど、曲全体がまるで一つのアトラクションのようだ。他にも、スティーヴィー・ワンダーによるハーモニカ演奏やジェイムス・ブレイクの耽美な歌声、ザ・ウィークエンドの激しい感情、Tame ImpalaのKevin Parkerによる速弾きなど、見逃せないショーが満載。しかし、やはり本作の最大の魅力は、トラヴィス自身の生き様を表現した唯一無二のビジョンを擬似体験できることだろう。